2011年02月04日

大とら@京都市下京区

おすすめ度:★★★★
(評価について・・★:マズー、★★:フツー、★★★:ウマー、★★★★:オススメ!)

京都の南北の大動脈「堀川通」と東西の大動脈「五条通」が交わる交差点。そんな京都の交通の要所に、時代が止まったかのような建物があります。それが「大とら」さんです。

↓お店の外観
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昔ながらのお店の扉をあけると、奥のほうから「寒いのに、よぅ来たねぇ〜」「最近、日曜日は客が来ないから、もう諦めとった」「こんな日に来てくださるなんて感謝、感謝」と愛敬のある、小柄なおばあちゃんが出て来られます。もう80歳を超えるお婆ちゃんが一人で切り盛りするお店です。

↓店内の様子
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注文して、料理を作る間、常にいろんなことを話してくださるお婆ちゃん。お店の歴史も、いろいろと話してくださいます。

お店を始めたのは、もう30年以上前。ご主人が借金の保証人になっていたことから、数千万円もの借金を背負ってしまったそうです。なんとか借金を返さなければ・・と、京都の南のほうまで働きに行っておられたご主人は、家に帰る途中、毎日、有名店「新福菜館」でラーメンを食べ、このようなラーメンを作りたいな・・と素人ながらに考え、試行錯誤した一品を作りだし、お店を出されたそうです。

その時、お婆ちゃんも主人を男にせにゃいかんと、職を辞め、いっしょにお店を始められたそうです。ラーメンだけでは・・とお婆ちゃんがメニューに取り入れたのが、焼きそば。それ以来、ラーメンはご主人、焼きそばは、お婆ちゃんの役だったとのこと。

なので、このお店はラーメン+焼そば+お好み焼きがメニューにあります。ラーメンを出すお店なのに、テーブルは、鉄板焼き用。ラーメンは鉄板を避けて、テーブルの端っこに置いて、いただくことになります。

数年前に、ご主人がお亡くなりになられ、それ以来はお婆ちゃんは、主人のやっていたことを思い出し、見よう見まねでラーメンを作っておられるそうです。「焼そばは、なんとか自分の思う味にできるようになったけど、ラーメンは素人やから自信ないんやぁ・・」だそうです。

ご主人が亡くなられてからは、頼りの息子さんに手伝ってもらいながら、なんとか借金を返されたとのこと。それまで、数十年間、ほぼ年中無休で深夜5時まで働き通しだったそうです(現在は、営業時間は深夜3時まで)。

借金を返されたのも、つかの間、その過労がたたったのか、後を継ぐ予定の息子さんは身体をこわされたそうで、今は、お婆ちゃんは息子さんが戻ってくるまで「留守番」をしてるそうです。話している時も、ずっと「私は留守番をしているんや」と言っておられました。

一時は、従業員が6人もいたこのお店、最近は、京都の交通規制が厳しくなり、駐車場のないこのお店は、客が激減したそうです。「特に日曜日の昼間は、誰も来んわ」「誰も来ん日は、天国の主人に、誰か連れて来てくれへんか?とお願いするんや」「客が来てくれた時は、お客さん来てくれはったで、と主人に知らせるんや」と。なんか話を聞いているとちょっぴり切ない・・・。

しかし、大変な人生を歩んでこられただけあって、口調も表情も強さを感じます。ただ、私が食べている間も、近所の方がお婆ちゃんに差し入れを持ってきてくださり「私は幸せもんです」とにっこり微笑まれます。とてもキュートな一面も持つ、お婆ちゃん。

お店の雰囲気も、すべてお婆ちゃんが作り出しているかのよう。「最近は灯油高いからなぁ・・・暖房は鉄板を付けてるんや」と焼そばを頼んでいないのにテーブルの鉄板に火をつけたり、食べ終わると「来てくれると思わんかったさかい」と黒飴をくれたり・・辛い過去の話をしていると、つい感極まって涙ぐむお婆ちゃん・・・(お婆ちゃん泣かないで!何度もお店に来るから!)

そう、このお店の主役はお婆ちゃんです。主人を立て、息子を愛し、年中無休で深夜まで留守番を続ける。そんな芯の強い昭和の女、しかしとっても可愛らしさを持ち合わせているお婆ちゃんが作る料理と、これまでの思い出が詰まった空間を共有できるお店です。


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特製チャーシューメンを注文すると、ゆっくりとした動きでお婆ちゃんが作り始めます。この時もずっとしゃべりっぱなし(笑)「せっかく日曜日に来てくれたさかい、麺も豚肉も多めに入れとくなぁ、お昼やし、お兄ちゃんおなか減ったら困るしなぁ・・・」と・・その手には普通に二玉くらいの麺が握られています(^^;いきなり大サイズのチャーシューメンですか・・

さて出てきたラーメン。とっても白濁した色合いの豚骨醤油スープ。具はチャーシューとネギ、メンマ、モヤシ多めです。狭いのですがテーブルの鉄板を避けてはじっこにおいてラーメンをいただきます。

「あんたらの口に合ったらいいけど・・・なんせ素人やし・・」というお婆ちゃん。スープを飲むと、豚骨のだしがとてもしっかり出たクリーミーな味わい。かなり濃いめに豚骨の味わいが感じられ、味付けは、やや甘い感じです。ご主人は「新福菜館」に通われたそうですが、京都の豚骨醤油ラーメンというより、純粋な豚骨ラーメンに近いような味わいでした。

麺は、中細のややカールしたような多加水麺。お婆ちゃんがたっぷり入れてくれたおかげでボリューム満点。やや柔らかい茹で具合で、クリーミーなスープとよく合います。鉄板が熱いので、麺をすすってスープが飛ぶとジュージュー言うのも、このお店ならではでしょうか。

チャーシューは、ややあっさりとした味付けですが、程よい柔らかさと、程よい脂身を含んでいて豚肉の味をしっかり楽しめます。量も多く食べ応え十分。

この味はご主人ゆずりなのか、お婆ちゃんオリジナルなのかは、今となっては分かりませんが、なんとも満足度の高い一杯で、とてもお婆ちゃんが謙遜するような素人のラーメンじゃありませんでした。お婆ちゃんにスープがとっても美味しいと話すと、にっこり微笑んで「ありがとう、ありがとう」と・・。  お婆ちゃん、また来るよ。次は自慢の焼きそばか、それとも味噌ラーメンか、迷うなぁ。

↓特製チャーシューメン
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↓チャーシュー
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↓麺とスープ
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↓おばあちゃんがくれた「黒飴」
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posted by たぬき at 19:45| Comment(2) | TrackBack(0) | ラーメン@京都